私は司法書士という仕事柄、相続手続きのご相談を多くいただくのですが、その際に「誰に相談すれば良いのか分からなかった…」というお声をよくお聞きします。
世間に相続の相談窓口は多数ありますが、一方で『誰にどんな相続相談をすれば良いのか』が、分かりづらくなっているように感じます。
手前味噌ですが、私は「相続を最初に相談するのは司法書士が良い」と思います。このページでは、その理由についてご説明しましょう。
理由1. 司法書士は相続関係書類取得のスペシャリスト
相続開始後、一番初めにしなくてはならないことは、とにもかくにも「戸籍の取得」です。
戸籍を取得して相続人を確定し、手続きを進める方が相続人であることを証明しなければ、どんな相続手続きも進めることができません。
また、お亡くなりになった方の出生から死亡まで、その方が人生において本籍地を置いた全ての自治体から戸籍を取り寄せる必要があります。(遠方の自治体からは、郵送申請などで取得します)自治体の数や場所にもよりますが、この「戸籍の取得」が、相続手続きでの最初の大きなハードルになることが多いです。
司法書士は「不動産の相続手続き」や、後述する「法定相続情報一覧図」を作成するご依頼をいただければ、相続人に代わって必要な全ての戸籍を集めることができます。
戸籍は一度取得すれば、その後に相続税の申告や銀行・証券会社などの相続手続き、相続放棄や遺言の検認などの裁判所手続きでも使えます。
実際に弁護士や税理士に相談された方でも「まずは司法書士に頼んで戸籍を集めてもらいましょう」というアドバイスを受けられることも多いので、最初に司法書士に相談して戸籍などの相続関係書類を集めておくと、その後の手続きや相談がスムーズに進みます。
理由2. 法定相続情報一覧図を作成すれば相続手続きがスムーズになる
「法定相続情報一覧図」とは、相続関係をまとめた相関図のようなものです。
集めた全ての戸籍を法務局に提出・申請して、作ってもらいます。
この法定相続情報一覧図は、数通〜数十通の戸籍がA4サイズ1枚〜数枚にまとめられ、金融機関や税務署などでの手続きにおいて戸籍の代わりとして認められています。
金融機関などに戸籍を提出すると、ほとんどがその場でコピーを取って返還してくれますが、そのコピーの時間が非常に長いんです…。また、郵送での手続きの場合、戸籍を送ってからコピーをとって返してもらうまでに早くても1週間はかかり、その間は別の手続きができません。だからといって戸籍を何セットも取るというのは、手間や費用的にお勧めしません。
法定相続情報一覧図を作成すれば、コピーの時間が短くなります。また、法務局で複数枚作成してもらえば、複数の金融機関などの手続きを同時に進めることができます。
この法定相続情報一覧図は、司法書士のホームグラウンドである法務局に申請する手続きです。「戸籍の取得」と「法定相続情報一覧図の作成」を司法書士にご依頼いただくと、その後のさまざまな相続手続きにも活用でき、スムーズに進めることができます。
理由3. 広範囲の知識と他士業との連携
「相続手続きをしなくてはならないけど、何から手を付ければ良いのか?」という場合、前述の通り、準備段階として「戸籍の取得」や「法定相続情報一覧図の作成」から始まるのですが、この段階で司法書士にご相談いただくと、その後どのように進めていけばいいのか、アドバイスが受けられます。
遺産分割協議書の作成や、自筆の遺言があれば遺言の検認、負の遺産が多い場合の相続放棄が必要になる場合もあり、これらについても司法書士は対応可能です。また、必要に応じて他のスペシャリストをご紹介できます。
「遺産の分配でもめている」「遺言の無効を訴えたい」「生前贈与などについて争いたい(された)」「遺留分の請求をしたい(された)」などの場合は弁護士へのご依頼をお勧めしますし、必要に応じてご紹介することも可能です。
司法書士による不動産の相続手続きに必要な『固定資産評価証明書』の「固定資産評価額」を調査することによって、おおよその財産額も把握できますので、相続税の基礎控除額を超えそうな場合は税理士への相談をお勧めしますし、必要に応じてご紹介できます。
このように司法書士は、他士業のスペシャリストと常に連携して手続きを進めています。そのため、最初に司法書士にご相談いただくことで、その後どのような専門家に依頼すれば良いのかなど、必要な手続きや問題点を浮き彫りにすることができます。
理由4. 司法書士はあなたの近くにいます
“街の法律家” 司法書士は、あなたのすぐそばにいます。
司法書士は相続手続きや不動産の売買・贈与、成年後見制度の利用など、暮らしに密着したご依頼が多いため、ターミナル駅や都心に集中するようなこともなく、身近な最寄り駅や住宅街で探しても意外なほど近くにいるはずです。
ぜひ「何から手を付ければ良いのか分からない」段階で、徒歩や自転車で行ける近所の司法書士事務所にご相談ください。
【ご注意ください】相続登記の義務化について
2021年4月21日に「相続に関する民法等の一部を改正する法律」が国会で成立し、この法改正で相続登記に「期限」や「罰則」が科されることが決まりました。
詳しくは、▼こちらのページをご覧ください。